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「それでは澪ちゃん。あちらで飲み物でも飲みながらお話しましょうか」
「は、はい、葉山さん」
そう声をかけられ澪が返事をすれば、夏蓮は「夏蓮でいいわよ」と言いながらころころと笑う。
「貴女、何歳かしら?」
「わ、私は、二十三、です……」
正直、年相応にみられたことはないのだけれど。そう思い方をすくめていれば、夏蓮は「わたしも、二十三歳よ」と言うのだから驚きだ。
「……え?」
「確かに、大人びているとはよく言われるから、驚かれるのは慣れているわ」
そう言った夏蓮の目には悲壮感など見えない。どうやら、年上にみられることを受け入れているようだ。
……それに対して、自分はどうだろうか。年相応にみられないことを嫌がり、受け入れられない。
「どうせ頑張ったところで自分の容姿は変わらないのよ。きちんと受け入れて、それを好きになってくれる人を捜した方が楽よ」
夏蓮はそう言うと歩き出す。そのため、澪もゆっくりと夏蓮の後に続いた。
(……ありのままを好きになってくれる人、か)
そして、澪はそんなことを思ってしまった。
こんな澪のことを、好きだと、恋愛対象だと言ってくれるのは――やはり、氷雨か。
(私は氷雨君のことが好き。……でも、やっぱり)
住む世界が違って、似合いもしない。そんな自分が彼の側に居てもいいのだろうか? 少なからず、そう思ってしまうのだ。
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