私が悪いんだ

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「花織、好きな人できたの?」  シーッと指を立てる花織は私に微笑んでみせた。 「由香里にだから言ったんだからね?」  その時の私たちは親友といって差し支えない関係だった。 「で、誰が好きなの?」 「えっとね田中聖也くんが……」 「ああ。あのイケメンかぁ」  放課後に寄ったマックでする恋バナ。高校生にとってありきたりな光景。だが、私の中には薄暗い感情が渦巻いていた。なぜ男なんだ? 花織の一番近くにいるのは私なのに……。絶対に花織は渡したくない……。  その翌日、私は田中聖也を呼び出し告白をした。 「特定の誰かがいないんなら私と付き合ってみませんか? 恋愛の練習相手として」  悩む田中聖也に私は畳み掛ける。 「後悔はさせません」  田中聖也がOKを出した日の夜、私は花織にひっぱたかれた。 「最低!」  その日から入った亀裂は未だに修復はできていない。ただ怒る花織が今まで見てきた花織の中で一番美しくあったため、私も沼に足を踏み入れてしまった。美しい花織をまた見たい。そう思ったのだ。 「佐々木さん、大丈夫ですか? 具合悪そうですよ?」  花織が店から出ていくのを見届けてから今日の相方スタッフ山田くんが声をかけてきた。 「大丈夫だよ。何ともないから」 「本当ですか? さっきの女性のお客さん来るときはいつも具合悪そうじゃないですか。何かされてるんですか?」  よく見てるなと感心はするが、何かをしているのは私のほうだ。下手に優しくしないで欲しい。 「何もないよ」 「そうですか……。何かあったら言ってくださいね。力になれるんならなりますから」  こういう男の子はよくモテるんだろうな。私の元カレたちは花織が好きで、それを嫌な私が奪ってきた人たちだ。純粋な恋心など私に理解できるはずもない。悪女を演じる。いや演じてなどいないか。私が悪女であるという事実しか残ってはいないのだから。  夜十時。退勤して一人夜道を歩く。心配性の山田くんが送りましょうかと言ってくれたが丁寧に断った。下手な優しさなど無用だ。気持ちは重いが、明日も店で花織を見られるならばそれでいい。  店から十分ほど歩いてから立ち止まり鞄からスマホを出す。画面を開きSNSを開く。お目当ては花織のアカウント。変な虫が湧いていないかの確認だ。SNSも花織に何度もブロックされて、その度にアカウントを作り直す。それも花織に嫌われる原因なのだろう。SNSで出会った元カレもいる。もちろん花織を好きだった人だ。私はただ花織を守りたいんだ。   
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