私が悪いんだ

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 学生に紛れ込みながら私は吉田の姿を見つけた。横には花織と数人の男女。遠巻きに眺めているとまず花織が離れ、一人ずつ離れ吉田と女性が二人きりになり会話を続けている。友人か彼女か。彼女だったら、それはそれで面白くない。花織ほど可愛い女はいないんだ。花織以外に愛を囁くのは許せはしない。  女性も離れ、吉田が一人になる。私はその背中をそっと追う。  一日、吉田を追い回したが怪しい箇所はなかった。何にもなかったとしても花織に近づくのは面白くない。変にイケメンぶってるところが胡散臭い。  あいつは花織に必要ない男だ。私はそう判断して今日のコンビニバイトに向かう。  今日の相方も山田くんだ。ユニフォームに着替えて店に立つと先に出ていた山田くんが怪訝そうな顔をする。 「佐々木さん、何かありましたか?」 「何もないけど?」 「そうですか……。何か悩み事があるように見えるのですが……」  余計なことだ。山田くんはイケメンかも知れないが私の内側には踏み込んで欲しくはない。 「何もないよ」  さらりと嘘をつく。それに悩み事があるのはずっと前からだ。叶わぬ恋のために花織の恋を壊しまくっている。 「そうですか……」  山田くんは至極残念そうに私から離れる。私はそんな安くない。  レジ打ちをしながら業務をこなす。一時間は動いて一息つきにレジカウンターの内側に戻ると入口の扉が勢いよく開いた。  鬼の形相の花織がそこにいた。  私が立つレジへとカツカツと歩いてくる。ああ、怒った顔も可愛いなぁ。  私の前に立ち、レジカウンターをパンッと叩いた。 「由香里! あんた今日、大学にいたでしょ? 私に近づくなって何度言えば分かるの!?」  私は花織の瞳をジッと見つめる。  やっぱり可愛い。 「なんでそんなに私の付き纏うの? 今度は吉田くん狙い?」 「違う!」  その言葉を即座に否定する。 「お客様、お店で騒がれては……」  山田くんが私を助けようとしてくれたが、私は手で制した。 「山田くん、この人、友達だから……」 「友達!? 裏切ったのはあんたでしょう!?」  花織はヒートアップしていく。 「どうして私に付き纏うの!? 今日こそはっきりさせて!」  店内のお客さんたちは、眉をひそめている。山田くんは仕方なく、並んでいたお客さんの接客を始める。花織は私の前を退く気はない。  潮時か……。  今言わなければ、この先もずっと言えないだろう。明日から、今ある交友関係の距離も変わるかも知れない。  それでもいい。  今、言う。 「私は……花織が好きなの……」 「は?」  花織の上ずった声。 「花織が好きだから、花織の好きな人を奪ってきた。花織が誰かのものになるのが嫌だった……」 「馬鹿じゃないの!?」  花織はまたレジカウンターを叩く。 「好きなら好きで正面から来なさいよ!」  店内が静まり返る。私はこれで恋も終わりかと思っていたが、花織の次にとった行動と言葉は私にも意外だった。  パンッ。花織は私の頬を叩いた。 「これでチャラ! 明日から私に好かれるために動きなさいよ! 私はあんたの好きを笑うような女じゃない!」
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