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耀くんとこの体育祭、今頃何やってんのかなーなんて思いながら午前中を過ごした。
そういえばお姉ちゃんとさっちゃんは何に出るんだろう。
軽い睡魔に襲われながらどうにか授業を受けた。
昼休みに耀くんから、
ーー今、黄色がトップだよ。僅差で赤が2位。で、白が4位
ってメッセージがきてた。
「敬也、お姉ちゃんとこビリだって」
「げ、マジで?うわー」
敬也が眉を下げながらパンを齧った。お弁当はもう食べ終わってる。
僕は玉子焼きの端っこをつまんだ。お弁当を詰める時、なんとなく端っこを自分のに入れる。お母さんが作ってる時、僕のに端っこは入ってなかった。この心理はなんなんだろう。
午後の授業はますます眠かった。秋になって、日光が教室の中に差し込むようになって、ほかほかと暖かい。
もうすっかり定着してしまった4人での下校の途中でスーパーに寄って、でもちょっと時間がかかるからって依くんに鍵を渡して先に帰ってもらった。
買い物の内容を見られるのが、なんか恥ずかしいっていうのもあった。
カゴを持ってゆっくりと商品を見て回る。
ずっと一緒にいるから、耀くんの好きなものも、食べる量もだいたい分かる。その中で、自分の作れそうなものを考える。
手の込んだものは作れないから、チルドの唐揚げの甘酢炒めにしよ。玉ねぎあったし。
今朝撮ってきた冷蔵庫の中の写真を見ながら、その他の足りないものを買って家に帰った。
自分家なのに玄関でチャイムを鳴らして開けてもらって、変な感じ、と思いながら開けてくれた依くんに「ただいま」って言った。
「おお、結構ガッツリな買い物だったんだな、珍しい」
僕の荷物を見て依くんが言った。
「あ、うん…」
言う?言わない?…言っちゃえ
「明日明後日、うち、僕以外旅行行くんだ。それで…」
「あー…、なるほど…」
依くんが、にやっと笑って僕を見た。じわっと頬が熱くなる。
「おけおけ。長かったな、ここまで」
ガハハと依くんが笑いながら、僕の頭を乱暴に撫でた。
「…依くん、色々ありがとね」
「気にすんな。大したことはしてねぇよ」
そう言いながら依くんが「早く冷蔵庫行け」と僕の背中を押した時、スマホの着信音があちこちで鳴った。
「あー、陽菜からだよ。体育祭終わったって」
と、えりちゃんの声。
「赤組優勝だってさ、碧。よかったな」
スマホを出した依くんが画面を見せてくれる。急いで冷蔵庫に食品を入れて、自分のスマホを開いた。
ーー耀ちゃん今日すごかったよ!100m1番だし、リレーは2人抜いてトップになるし、騎馬戦も生き残ってたし
ーー黄色ほとんど勝ってたのにリレーで逆転されちゃったー
姉とさっちゃんのメッセージ。
耀くん大活躍だ。約束した通り。
「なんつーか、天は与えるとこには与えますよね」
「だよなー」
「まあでも、その分不自由とか面倒くささは背負ってるから」
ね、とえりちゃんが僕の方を見た。僕は唇を噛んだ。
「陽菜たちって今日打ち上げ?」
「って言ってたよ、お姉ちゃん」
耀くんも。
「じゃーおれらはいつも通り、宿題でもすっか」
依くんがそう言った時、玄関チャイムが鳴った。ドアを開けるとちかちゃんと萌ちゃんと啓吾が来ていた。
「赤組優勝!」
と言ってちかちゃんが両手を上げた。
ぱちん!とハイタッチ!
えへへと笑ったちかちゃんの、カールした茶色い髪が揺れた。今日もちかちゃんはバッチリ可愛くしてる。
「碧、良かったね」
萌ちゃんがそう言って控えめに手を上げてたから、萌ちゃんとも低めのハイタッチをした。
それから僕たちはローテーブルを2つ並べて宿題をした。
みんなが帰って、お母さんが帰ってきて、ご飯がほとんどできた頃にピンポーンと玄関チャイムが鳴った。
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