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 シルバーのHAPPY BIRTHDAYという文字のバルーン。  白と水色の風船。銀色と、ラメ入りの水色の三角ガーランド。  シルバーを基調にしたシャープな印象のデコレーション。 「やっぱ耀ちゃんはキリッとした感じ、でしょ?」  姉がにやりと笑う。  昨日姉たちが100円ショップや雑貨屋さんで買い集めてきたグッズたちを、手分けして飾り付けていく。  今回もケーキやオードブルを受け取りに行ったのは光くんと華ちゃんだ。  ケーキは僕が選んだモンブラン。オードブルは近所のスーパーに注文してある。年に何回も頼むから、いつもサービスしてくれて、すごい量のポテトフライが入ってる。  キッチンにケーキの焼けるいい匂いが漂い始めた。今回はガトーショコラ。姉とちかちゃんが中心になって作っていた。  その甘い匂いを嗅ぎながら、僕は今ひたすら食材を四角く刻んでいる。 「碧、このベーコン炒めるの?」 「そう。カリカリになるまで」  はーい、と言って萌ちゃんがフライパンを火にかけた。 「あ、このゆで卵、黄身が透けて見えてる」 「ちゃんと転がしたつもりだったのにねー」  敬也とえりちゃんがゆで卵の殻を剥きながら言った。 「コブサラダってほんとはブルーチーズなんでしょ?」 「そうらしいけどベビーチーズでいいかと思って」  オーブンが、ピピーっと鳴ってケーキの焼き上がりを報せた。  ちかちゃんが両手にミトンをつけて、オーブンの中から「熱い熱い」って言いながらケーキを出して、脚のついたアイアンの鍋敷きの上にのせた。そして型に沿ってナイフを入れる。  このまましばらく冷ましておくらしい。 「もうサラダのレタス敷いちゃう?」 「いいんじゃない?あ、ペーパーで拭いてね」  オッケーと言いながらさっちゃんがレタスを千切ってお皿に敷き詰めていく。この上に切った具材をストライプ状に並べる。  ブロッコリー、ゆで卵、サラダチキン、トマト、チーズ、アボカド、ベーコン。 「碧、手際がいいよね。お料理好き?」 「嫌いじゃないよ。てゆーか、うちはたいてい3人で夕食作ってるから、慣れてるだけだよ」 「お料理は慣れが1番でしょ」  僕が刻んだ食材を、さっちゃんが並べていく。ゆで卵を剥いた敬也とえりちゃんは、部屋の飾り付けの方に戻っていった。  片寄ってるゆで卵を黄身が崩れないように慎重に切っていく。  萌ちゃんが炒めたベーコンをペーパーを敷いたお皿に出した。  玄関チャイムが鳴って姉が走って行った。華ちゃんたちが帰ってきたんだろうな、と思っていたら、オードブルの唐揚げの匂いと共に入ってきた。 「ケーキ、冷蔵庫に入るー?てかスゴい!銀色キレイ!」 「でしょー?あ、冷蔵庫大丈夫よ。空けてあるから」  入れとくー、と華ちゃんがキッチンにケーキを持って入ってくる。 「わー、サラダ綺麗。おしゃれー」 「ねー。手間はかかるけど難しくないし」 「にしてもキレイに切ったね、碧」  えらいえらい、と華ちゃんが僕の両肩をぽんぽんと叩いた。 「あと30分で耀ちゃん来ちゃうよー」 「あ、やべ。Pが落ちてくる」 「取り皿とコップ並べちゃってー」 「ケーキどう?粗熱取れた?」  わいわい言いながら準備をする。ローテーブルを2つ並べて、お菓子や料理を並べていく。 「この珍しい色のコスモスどうしたの?」 「あー、おれ持ってきた。母さんが耀兄の大ファンだからさ、花持ってけって。ベランダで育ててるやつ。なんだっけ?チョコレートコスモス?」 「チョコレート?色がちょっと似てるから?」 「匂いがチョコっぽいから」  へー、と言いながら何人かが匂いを嗅いで、なるほどー、と言っていた。  ほぼほぼ準備が整ったところに、玄関チャイムがピンポーンと鳴った。 「ほら碧。耀ちゃん来たから行って」 「あ、うん」  言われなくてももう足が玄関に向かってる。大慌てでドアを開けると、耀くんが立っていた。  今日もやっぱり耀くんは格好いい。 「いらっしゃい耀くん。準備ほとんどできてるよ」  と、僕が言ったところへリビングから、 「あー、ちょっと待って。ちょっとまだ入って来ないで、耀ちゃん」  と、えりちゃんの声がした。耀くんは靴を脱いで上がってきながら「なんだろうね」と言った。  そして僕をぎゅっと抱きしめた。 「あと5分待っててー」  と、中からさっちゃんの声がした。 「じゃあ5分、碧を堪能しようかな」 「なにそれ」  くすくす笑いながら、耀くんが僕の頬や額にキスをした。  そして僕の顎に手をかけて「今のうちに、ね」と囁く。  誰かが玄関を覗くかもしれない。でも…    僕は耀くんに促されるままに上を向いた。  耀くんの綺麗な顔がすーっと寄ってきて、ふわりとしたキスをした。  
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