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「そんな耀ちゃんに、あたしたちからプレゼント。いや、プレゼントっていうのも違うのかなあ」
と言いながら、姉が後ろに手を回したまま近付いてくる。
「そだね。もう耀くんのだしね。ま、いいんじゃない?」
「そうそう、細かいことは気にしない」
目の前をひらひらしたキレイなものが通った。
と思ったら、そのひらひらが僕の首に当たった。
首の後ろで何かされてる。
なに?なに?
振り返ると、姉とさっちゃんとちかちゃんがニヤッと笑って僕を見た。
首元にひらひらの感触。…リボン?
「はい!耀ちゃん、受け取って!」
3人が僕の背中を押した。
押された僕は耀くんの脚に手を突いた。
至近距離で耀くんのびっくりした顔。
その驚いた顔が、次の瞬間、花咲くように微笑んだ。
「はは、ありがとう。一生大事にするよ」
そう言った耀くんが、ぐいっと僕を膝の上に抱き上げた。僕は耀くんを跨ぐ格好で膝に乗せられてしまった。みんないるのに恥ずかしい。
でも、それよりも…
一生大事にするよって…、言った、よね?
「…ほんと?耀くん…」
僕を抱きしめてる耀くんにしがみついて訊いた。
みんながいたって訊きたい。
2人になるまでなんて我慢できない。
「ほんとだよ、碧。ずっと大切にするから、一生俺と一緒にいて」
低く、甘い声が身体中に染み込んでくる。
うれしい
うれしい、うれしい
耀くんにしがみついたまま、うん、うんと頷いた。
首に付けられたリボンがくすぐったい。
「…なんか、誕生日会が結婚式みたいになったね」
「リボンも付いて可愛いしね」
「つか、リボン巻いてプレゼントっていつの時代だっつーの」
「だって可愛いだろうなぁって思ったんだもん。でも良かった。これでちか、諦められる。耀くんのこと。…忘れられなくても」
へへっと笑ったちかちゃんが鼻を啜った。
「自分で自分を崖から突き落とすみたいな荒療治だよね」
「まあ、でも、解る。その気持ち」
姉が、ふっと笑って言った。
「碧にリボン付けてプレゼントしようって聞いた時は、ちかちゃんどうした?って思ったけど、正直」
「うん。陽菜ちゃんそんな顔してた。呆れられてるなーって思ったけど、協力してくれてありがとう」
そんなみんなの会話を、僕は耀くんに抱きついたまま聞いていた。
僕を抱きしめている耀くんの腕が温かい。
「光ちゃんも華ちゃんのこと大事にするのよー」ってえりちゃんが言った。
「してるつもりだっ」って光くんが言って「まぁまぁかなー」って華ちゃんが言う。
「耀!耀のせいでおれ毎回風当たりがキツいんだけど!」
光くんが耀くんに抗議する。
「そんなこと言われても、俺的にはこれが普通だから」
そう言いながら耀くんが僕を抱き直した。
「光輝は光輝のやり方でいいじゃないか。俺はやっと手に入れた碧を、目一杯可愛がりたいだけだからさ」
ぎゅーっと僕を抱きしめて耀くんが言う。
その言葉が嬉しくて、でもちょっと恥ずかしくて、僕はまた耀くんの肩口に顔を伏せた。
「…溺愛っすね」
ポツリと敬也が言った。
「だな」
と依くんが言って、みんなが笑う気配がした。
「いい誕生日会になったね。あたしたち天才ー!」
ねー、と笑う姉たちの声を、耀くんの腕の中で聞いている。
僕の頬に、耀くんがこっそりキスをした。
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