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 楽しかった誕生日会が明けて翌日。  今日からは姉たちも帰りが少し遅くなる。    耀くんとこの体育祭まであと5日。  夏休みの5日間なんてあっという間だったのに、耀くんに朝しか会えない5日間は気が遠くなりそうなほど長い。  そしてその体育祭のあとは3連休がやってくる。  普段は嬉しいけど、今は正直邪魔くさい。  休みじゃなくて、平日の午後がいい。  うちも、耀くん家も、親はカレンダー通りの休みだから、2人っきりになれるのは平日の放課後だから。  でもとりあえず、土曜は博物館に行くことにした。ずっと部屋に(こも)ってるのも変だし、博物館は料金も安いし、割と早くから開いてるから。  まずは土曜日を目指して5日間を乗り越えようと思った。日、月の予定はまだ決まっていない。  放課後、敬也たちと帰ってきて、いつもは姉とする洗濯物の取り込みを1人でして、いつものように宿題をした。  姉は普段より40分くらい遅く帰ってきて「また焼けちゃったー」と腕を見せてきた。 「応援の練習、色ごとに違うところでやるから、耀ちゃんもさっちゃんもどんなのか分かんないのよねー」 「お姉ちゃん、何色?」 「うちは白。さっちゃんとこは黄色で、耀ちゃんは赤」  黒の学ランに赤のハチマキ…  絶対格好いい  生で見られないのが本当に残念 。  お姉ちゃんにもらった耀くんのアルバムを見ながら、ちょっと恥ずかしいけど、お姉ちゃんに頼んで写真買ってもらおーって思った。  行事に力入れすぎだけど、カメラマンがいるのはいいことだ。  おかげで格好いい耀くんを見ることができる。 「ねぇ耀くん」  夜の電話。カレンダーを横目に見ながら耀くんに呼びかけた。  ここまで2日、頑張った。 『うん?』 「…今って…帰り、駅に何時に着くの?」  明日が、耀くんの誕生日当日。  できれば朝だけじゃなくて、夜も会いたい。 『6時半過ぎ、かなぁ?その時間でも大丈夫なら会いに行くよ?』 「う…ん…」  友達が、特別な用もないのに夕食時の家にちょっとだけ寄って行くって、あんまりないよね。しかも帰り道の途中でもないし。お母さんも帰ってきてる時間だし。 『何か口実、考えようか?』  優しい声が耳に響く。 「宿題、解んなかったことにする」 『うん、そうだね。そうしようか』  この前それで大丈夫だった。お母さん、何も言わなかったし。  ちょっとでもいいから、会いたい  誕生日の本人に家に来てもらうのは変な感じだけど。  まあでも、それを気にするのはやめておこう。  明日は夜も会える。そう思いながら眠りについた。  20分早く起きて、10分早く家を出る。  10分長く、耀くんに会える。門を出たらすぐそこで待っててくれることに慣れてきてしまってマズい。 「おはよう、碧」  今日も耀くんは来てくれてる。10月に入って制服は衣替えだ。ブレザーが格好いい。 「お、おはよ、耀くん。あと、お誕生日おめでとう」  見上げながら伝えると、耀くんが「ありがとう」と言って僕の額にキスをした。思わず周りを見回したけど、幸い誰もいなかった。耀くんが、ふふっと笑った。 「大丈夫だよ、ちゃんと確認してるから。気を付けてないとまた依人に怒られる」  そう言いながら僕の肩を抱いて、駅に向かって歩き始めた。 「来週からは放課後普通に帰れるけど、朝はどうする?元に戻す?」 「うーん。時間は戻した方がいい…かも。お母さんに負担かけちゃってると思うし。でも…」  耀くんの制服のブレザーを握り直す。 「でも?」 「…うちまで迎えには、来てほしい。だめ?」  耀くんを上目に見ながらねだってみた。  僕を見下ろした耀くんが、少し肩を抱き寄せる。 「駄目なわけないだろ?もちろん迎えに行くよ。ていうか、そんな可愛くお願いされて断ると思う?」  くすくす笑いながら耀くんが言った。 「いい誕生日だなあ。朝から碧が可愛くて」 「よ、耀くんっ」  恥ずかしいから、っていう抗議の気持ちを込めて睨んでみたけど、耀くんは相変わらずにこにこしてた。  そのうち普段通り、えりちゃんや敬也が来て、みんなが耀くんに「おめでとう」って言ってた。  そしてまた、バラバラに電車に乗った。
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