51

1/1
228人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ

51

 寝付きが悪いのに、朝は目覚ましのアラームより早く目が覚める。  20分早い起床時刻に慣れてしまった。 「そういえば碧、土日のご飯どうするの?簡単に作れるもの買っとく?それとも耀くんとお買い物行く?」  朝、母にそう訊かれてお弁当箱を落としそうになった。  耀くんとお買い物…っ 「…今日、帰りにスーパー寄ってくる」  平静を装いながら応えた。  正直、土日は家から出たくない。 「そう。そうね、碧、それなりにお料理できるものね。お財布とエコバッグ、忘れずにね」 「うん」  そう応えたものの、ちゃんと料理ができるのか、そもそも食べる気になるのかも分からない。 「あ、あと冷蔵庫の中身とお米、好きに使っていいから確認していってね」 「分かった。写真撮っとく」  気を取り直してお弁当箱にご飯を詰めて並べた。 「お母さん。来週から朝の時間戻した方がいいよね?」  母の焼いた玉子焼きを切りながら訊く。 「お母さんはどっちでもいいわよ。起きる時間同じだし」 「そうなの?」 「うん。碧が早起きして手伝ってくれるから、お母さん早く起きる必要ないもの」 「…じゃあ、今のままでいい?」 「いいわよ。お母さんは全然。はい、目玉焼きできたー」  玉子ばっかり、と母が笑いながら言った。 「耀くん、土日のご飯、何が食べたい?」 「おはよう」を言って、肩を抱かれて駅に向かいながら耀くんを見上げて訊いた。 「わ、朝からドキドキするな。そうだったね、食事考えとかないと」 「あと、みんなね、9時くらいに出るって。耀くん何時に来る?」  みんなが出発した後かな、と思いながら訊いてみた。 「じゃ、9時前に行って挨拶するよ。泊めてもらうし」 「え…。なんか、恥ずかしくない?」  上目に見上げると、耀くんも少し目元を染めている。 「まぁ、恥ずかしくないって言ったら嘘だけど…。でも、ちゃんとしときたいし」  少し眉間に皺を寄せて、斜め上を見据えた耀くんが唇を噛んだ。  その横顔にときめいた。 「じ、じゃあ、土曜のお昼と夜と、日曜の朝とお昼だね。僕がテキトーに買ってきてもいい?」  指を折って数えながら、ちらっと耀くんを見上げて訊いた。耀くんは「ん?」という顔をしてる。 「あの…、途中で出かけたり、とか、したくないから…」  ずっと2人でいたい。だから…  耀くんが、ぐいっと僕を抱き寄せた。 「…もうほんとさ、碧、最近可愛すぎるんだけど」  そう耳元で囁く。 「元々すごく可愛いのに、更に輪をかけて可愛くなるってナニ?俺の何を試してるの?」 「え、別にそんなつもり…」 「うん。分かってるよ。碧」  じっと目を見つめられて、とくんと心臓が跳ねた。 「碧が俺を煽ってくる時、意識してる時としてない時があるよね。さっきのは無意識。ほんとタチ悪い」  くすくすと耀くんが笑う。 「このまま体育祭サボってうちに連れ込みたいよ、マジで」  それはそれで魅力的だ。…だけど。 「ダメだよ、耀くん。体育祭出ていっぱい活躍してよ。カメラマンがつい耀くんばっかり撮っちゃうぐらい。僕、耀くんの体育祭の写真が欲しいよ」 「写真欲しいの?俺の?」  うん、と頷いて応える。 「去年のね、お姉ちゃんがくれたんだ。めちゃくちゃ格好よかった。だから今年のも、欲しい」  耀くんを上目に見つめながら言うと、切れ長の目を少し見開いた後笑った。 「そっかぁ、なら頑張ってこようかな、碧のために」  そう言った耀くんの目元が赤い。  ちょっと照れてる。 「食事は碧に任せていいの?代金は払うけど」 「お金のことはいいと思うけど…。じゃあ買い物しとくね」  そんな話をして、朝は時間切れになった。  あ、来週からも朝同じ時間って言い忘れた    
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!