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 明け方にふと目が覚めた。  すぐそこに、眠っている耀くんの綺麗な顔があった。  嬉しくて、そっとその頬を撫でると、眠ったままの耀くんにぎゅっと抱きしめられた。  規則正しい寝息にまた瞼が重くなる。    耀くんの腕が身体にのっていて少し重いのも幸せ。 「おやすみ」は聞けなかったけど、また今度のお楽しみに取っておこう。  耀くんの肩口にすりすりと顔を擦り寄せた。  大きな手が僕の頭を撫で下ろして止まった。  こんな幸せな寝場所は他にない。  そう思いながら、再び眠りに落ちた。  次に目が覚めた時、目を開ける前から明るいのが分かった。  何時かな、と思いながらゆっくりと瞬きをすると、ぎゅうっと抱きしめられた。 「おはよう、碧」 「耀くん…」  朝からキラキラと眩しい笑顔の耀くんが、僕の額に頬にキスしてくれる。 「寝顔もめちゃくちゃ可愛いけど、起きてもやっぱり可愛いなぁ、碧は」  そんなことを言いながら、僕の頭を、背中をゆっくり撫でた。 「おはよう、耀くん。いつから起きてたの?」  ちょっと声が掠れちゃってる。 「少し前だよ。起きたら碧が自分の腕の中にいるなんて、まだ夢見てるのかと思うぐらい幸せだよ」  そしてまた、ぎゅうっと僕を抱きしめた。 「昨夜、また無理させたね。声枯れてるし」  ごめんね、って謝るから、ううん、って応えた。 「僕もね、昨日からずっと幸せなんだ。だから耀くん、謝んないで」  記憶はあやふやだけど、何度か「もっとして」って言った気がする。    昨日のネジのゆるみ切った自分を思い出すと恥ずかしい。  赤くなってくる顔を隠したくて、耀くんの広い胸に擦り寄せた。  耀くんはたぶん分かってるから、僕の頭をよしよしって撫でてくれてる。 「碧、シャワーしよっか。寝る前に一応身体は拭いといたけど」  その言葉に驚いて耀くんの胸から顔を上げた。 「え、あ、ありがとうっ、耀くん」  全然覚えてない 「あはは。目ぇまん丸で可愛いなぁ。碧は覚えてないよね。もうぐっすり眠ってたから」  くすくす笑いながら、耀くんが僕の腰から脚にかけてをさらりと撫でた。  思わずびくりとする。 「昨夜はどこを触っても起きなくて、疲れさせちゃったなって反省したよ」  もう一回ごめんね、って言った耀くんが、また僕を抱きしめてくれた。  そして僕を抱いたまま、よいしょと起き上がった。  それから、耀くんに支えてもらいながら階段を下りて、2人で一緒にシャワーを浴びた。耀くんが、僕を頭のてっぺんから爪先までキレイに洗ってくれて、嬉しくて恥ずかしかった。 「耀くん、背中洗ったげる」  僕はそう言って、広い背中に泡をのせた。  …赤い爪痕 「痛くない?」  そーっと撫でながら訊いた。 「ちょっと染みるくらい」  全然平気、と耀くんが笑って応えた。  シャワーを終えて、また耀くんが髪を乾かしてくれて「休んでな」って言われたけど、ゆっくり階段を上って自分の部屋に入った。  シーツ、洗っとかないと。  そう思ってベッドからシーツを剥がしながら、色んなことを思い出してしまって1人で赤面した。  さっき鏡に映ってた身体の痕もすごかった。  洗濯物を抱えて洗面所に行くと、ちょうど耀くんが髪を乾かし終えたところだった。 「あ、碧、ごめんな。この後でって思ってた。歩くのしんどいよね」  心配そうな顔で近寄ってきた耀くんに「大丈夫」って応えながらちょっとよろけた。  すかさず肩を抱かれて、なんて幸せなんだろうって改めて思った。  
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