2. G3RM!CIDE

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2. G3RM!CIDE

『瑛子ちゃん久しぶり。お父さんです。まだ東京で働いてるの?^^』  たまに届く、父からのメッセージ。今や瑛子(えいこ)と呼ぶのは彼だけだ。  数年音信不通だったのが悪かったようで、どうやったのか私の連絡先を調べたらしい。迷惑ったらありゃしない。  住所まで調べられたら堪らないので、律儀に返信するよう心掛けている。 『働いてるよー』 『久しぶりに会いませんか?^^』 『シフト出たら連絡する』 『はい。待ってます。』  文字を打つたび心の何かがすり減るのがわかる。それが何だと言われたら上手く説明出来ないのだけれど。 「おっきな溜息。どした?」  二段ベッドの天井から乙女さんの声がし、見られもしないのに反射的にスマホを伏せた。  何だかんだ同居生活は順調だ。勤務する店舗が違うので職場では顔を会わさずに済むのが気楽だ。  乙女さんは源氏名で、本名は知らない。見た目は三十前半くらい。ちなみに彼女の二重は天然だ。腕のいい美容外科で理想の二重にすべく研究を重ねた私が言うのだから、間違いない。  その美貌があれば自力で部屋を借りられる稼ぎはある筈なのに、彼女は一向に寮を出て行こうとせず、ぐーたら新人の(わたし)とのルームシェアに甘んじている。  まあ、駅近で立地は良いし近くに激安スーパーもあるし、乙女さんはそこが気に入っているのかもしれない。知らんけど。(これは最近入店した自称現役JDがよく使う口癖だ) 「私、溜息ついてました?」 「疲れてる証拠。飴ちゃんあげる」と言って、乙女さんは上段から何かを放り入れた。昔懐かし駄菓子の飴。  安っぽい水飴はしつこくねばねばと絡みつき銀歯を剥がしてしまった。小さなきらきらの欠片をつまみ、ふと思いつく。 「銀歯って売れるんですかね?」 「銀の相場、調べてみよっか」 「うーん。やっぱりいいです。お先にシャワー浴びまーす」  中学生の頃、虫歯が酷すぎて学校の指導で歯医者に連れて行かれた。だから私の歯は銀歯だらけだ。
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