最終章 挑戦状

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でも、物事を自分に都合のいい方に考えすぎて、ぬか喜びになったら辛すぎる。 僕は、勝手に激しく動き始めた心臓を落ち着かせようと、一つ大きく深呼吸をした。 そしてそのぬいぐるみの写真の上に付けられたキャプションの意味を解読することにした。 そこに書かれたメッセージは…。 『#親愛なるフォロワーさんへの挑戦状です』 『#curryの前にあるものは…』 『#ボクにとっての原点の地より』 『#3枚目のキセキを信じてる』 『#ボクのことを知ってるフォロワーさんなら分かるはず』 『#このメッセージが届きますように』 そこには、ハッシュタグのついたメッセージが並んでいた。 このメッセージはどういう意味だろう。 僕は作家としての白崎ユノカのファンという訳ではないし、関心を持ったのも最近の、新参中の新参者。 さっぱり見当がつかない。 しかも『3枚目のキセキ』って、今回の投稿の画像はそもそも2枚しかないし、これが通算3回目の投稿ってわけでもないから、全く意味が分からない。 ユキさん、今缶詰になって執筆活動してるけど、新作でミステリーにでも挑戦するのだろうか。 それとも、缶詰にされてるストレスで、少しおかしくなってるのだろうか。 僕はさっぱり分からないけど、昔から白崎ユノカのファンで、ミステリー好きな折原なら、このメッセージに隠された意味がわかるかもしれない。 ファンに向けてメッセージを送って遊んでるってことは、ユキさんが僕のぬいぐるみを持ち去ったのにはどうやら深い意味はないのかもしれない。 そんな気がして、投稿写真を見て昂っていた僕のテンションは、急激に落ち込んでいった。 ------------------ 「拓哉くん、今回の投稿、見た?」 その夜。 予想通り折原が電話してきた。 もう折原は、メンタル維持云々関係なく、最近は普通に三日に一回は電話してくるようになっていた。 まあ折原に言わせれば、鳥取という片田舎に転勤させられて周りに友達もおらず、市内に時間を潰して遊べるようなところもないので、仕事の終わった後の平日の夜は暇でしょうがないからっ…てことらしいけど。 ストレスが溜まり過ぎて以前みたいに自暴自棄になったり、寂しがり屋のウサギのように病まれても困るから、電話くらいなら…と、僕も受け入れるようにはしている。 「でさ、いざ家に帰ってテレビ見ようったって、鳥取、民放が3つしか無いんだよ?無しよりの無しだよね。 TV夕日系が無いから、金曜の夜に『Mスタ』見られないんだよ?」 「まあそう言うなって。そういう地方の人は、みんなケーブルテレビに入るんだよ。 そうすれば見られるチャンネル増えるし、もちろん『Mスタ』も見られる。僕の地元もそうしてるよ」 田舎のテレビ事情は大抵どこもそんな感じだ。 折原は東京生まれ東京育ちだから知らないだろうけど。 ------------------ 「写真?ああ見たよ。 折原は、あのメッセージに隠された意味分かる?」 僕は折原なら解読できたかもしれないと、少し期待をしながら尋ねた。 ツイッターなどで、白崎ユノカファンの人たちの反応を見てはみたけど、いろんな推理がなされていて、これといった正解は見当たらなかった。 って、まあ正解はユキさんしか知らないんだけど。
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