君と歌う不協和音

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 志望校を決める基準は学園祭がいかに楽しいものとなっているかだった。制服のデザインとかどうでも良かったし、進学率とか就職率とかも興味なかった。だから、近所の高校の学園祭はすべて回ろうと決めていた。  そして、学園祭に力を入れている三件目の学校で全身が痺れるような衝撃を受けた。部活動に力を入れており、各々の部活が様々なパフォーマンスを繰り広げていた。その中でも際立って盛り上がっていたのが、軽音楽部だった。聞いたことのない曲だったが、ギターやドラム、キーボード。汗をしたたらせながら全力で演奏し、腹の底から声を張りながら歌うボーカルの人もかっこよかった。 「短い春も長い夏に潰されてしまうけど 寂しくなる秋が訪れる前にはまた花を咲かすよ」  今にも泣いてしまいそうな切ない声で、体育館中に響いたその声にまるで一目惚れをしたかのような衝撃を感じた。志望校はここにしよう。学力的には少し足りないが、それぐらいなんてことない。もともと勉強は嫌いじゃないからなんとかなる。絶対、ここへ通うんだ。そう心に決めた帰り道、もう何年も触っていない押し入れの奥にあるギターのことを思い出していた。
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