君と歌う不協和音

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無事、志望校に合格できたためこれまでにないぐらい湧き上がってくる興奮を抑えられずにいた。これから入学式を控えているのにも関わらず、校門をくぐると部活勧誘で人がごった返していた。誘われた部活のすべてを断って、軽音楽部の部員を探した。しかし、結局見つけることはできず、新入生として組まれた予定に従った。そして、最後に担任となった先生の激励の言葉をもらって、すぐに教室を飛び出した。配布された資料の中にあった学内マップから音楽室の場所はすでにマークしていた。まだ誰もいない可能性もあったが、去年見たあのパフォーマンスの一員に加われると思うと、走らずにはいられなかった。教室棟と特別棟で分けられた校舎の渡り廊下を走り抜け、一番奥にある音楽室めがけて一直線だった。 「ここが軽音楽部の部室で合ってますか!」  ノックもせずに扉を開け放ち、大きなで叫んだ。走ってきたせいで、すぐには顔を上げられず呼吸を落ち着かせようと胸に手を当てる。少しずつ落ち着いてきて、顔を上げようとしたが返事がなかったため自分のほうが一足早かったか、もしくは部屋を間違えてしまったのかと考えた。ちゃんと考えてみれば、音楽室は吹奏楽部が使い、軽音楽部は空き教室などを使っている可能性もあった。恥ずかしくなり、その場にしゃがみ込むと人の声がした。 「きみ、大丈夫……?」  それは、遠くまで響き渡りそうな澄んだ声の持ち主だった。去年ボーカルをしていた人とは絶対に違う声。思わずバッと顔をあげると、驚きを隠せない女性の顔があった。腰まで届きそうな長い黒髪は艶があり、重々しくなかった。ふわりと香ったシャンプーの香りに思わずドキリとする。
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