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当時つき合っていた紘登のそばを離れてすぐに妊娠に気づき、二十六の時に娘を産んでから三年が過ぎた。
ここへ一緒に来ることを目標にずっと育ててきたのだ。親には猛反対されたけど、兄に協力してもらい、何とか一人で育ている。
千帆を育てると決心してからは様々な職種をこなしてきた。配送の手伝いからスーパーのレジやファミリーレストランの調理、今ではキッチンカフェでホールのアルバイトをしている。
「よし、トトは先に行ってるから、亜澄と、千帆はゆっくり歩いて来るんだぞ」
兄は千帆に念を押すように言葉をかけると、目指す場所に近い方の列へ進んだ。こちらの列も動き出し、チケットを入園ブースにかざす。園内がオープンする合図の音楽が流れ、アナウンスが聞こえてきた。
『ようこそ、シャイニーワールドへ。ここから一歩中へ入れば、あなたはすでに違う世界の住人。輝くような素敵な世界へ、さぁ、行ってらっしゃい!』
久しぶりに聞くセリフに涙が出そうになった。
ここは小さな頃から大好きだった場所。そして、千帆と私と紘登を結びつける唯一の場所だから。
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