6.彼の元で

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「ごめん……。こんなことをするために、君をここへ連れてきたわけじゃない。ただ、亜澄を感じたかった。一度触れてしまうと、もっと欲しくなって……」  私は首を何度も横に振った。 「私も、一瞬だけ昔に戻ったみたいに感じちゃった。でも、今の私たちは立場が違うから」  紘登はくしゃっと前髪をかき上げ、体を起こした。 「そうだ。これからしばらく週末だけ家族のように過ごそう」 「家族……⁉ どういうこと?」 「俺は週末だけ千帆ちゃんの父親として手伝う約束だ。二人が自由にここへ来て食事をしたり、どこか一緒に遊びに出かけたり。な、いいだろ?」  嬉しそうな表情で問いかけられ、何も返せない。 「でも……」 「亜澄は、ここで過ごす代わりに家事をやってもらえばいい。そうすれば君も遠慮なくここへ来られるだろうから」  突然の提案に驚いて起き上がる。断ろうにも、無邪気に喜んでいる紘登の表情を見ていたら、言葉が見つからない。 「お願いだ。この我がままだけは聞いて欲しい」 「――わかった。でも、千帆が混乱するから、お友達としてね」 「それでいいよ。こらからは週末が待ちきれなくなりそうだ」  紘登は喜びを溢れさせるように、こちらへ笑みを向けた。  彼が部屋を出ていくと、私はベッドに寝ている千帆の隣へ、そっと潜り込んだ。目を閉じると、紘登の温もりと優しい声が蘇り、キスの余韻がいつまでも消えなかった。
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