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「ヒロ、これなぁに? おばけ?」
「ププッ」
私はたまらず吹き出してしまった。つられて紘登も笑い出す。
「さっそく見抜かれた。俺は美術的センスがまるでないからな」
身支度を整えると、三人で和やかな食卓を囲んだ。
こんなにゆったりと穏やかな朝を過ごすのって、何年ぶりだろう。絵に描いたような幸せに、心がじんわりと綻んだ。
紘登の車に送ってもらい、約束の時間にシャイニーワールドのエントランスへ入った。
普段は出入りできない彗星の城の一室へと案内される。西洋風の家具が置かれ、客室のような部屋だ。ステンドグラスが外からの光を通し、室内にカラフルな色を反射させていた。
CMプロデューサーで監督を勤める男性から指示が出される。
「二人とも衣装とメイク、お願いします。準備が整ったら。ここから撮影がスタートしますから」
何のことかわからずポカンとしていた。
千帆だけだと聞いていたはずなのに、まさか私まで着替えるの……⁉
「そ、そんな話聞いてない。……紘登、ムリだよ」
隣に立つ紘登が笑顔で私の耳元へそっと囁く。
「せっかくだからって監督が。最初は二人が一緒にいるところを撮らせてくれないか? 大丈夫。背中しか映らないから」
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