7.幸せと真実

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「だって……」  大勢のスタッフが待っているのに、いまさら嫌だとも言いづらい。 「ドレスもちゃんと亜澄用に準備してあるから」  勧められるままに、千帆と戸惑ったままの私は控室へ向かう。  それから三十分後、手慣れたスタッフに囲まれ私たちの準備が整った。  私と千帆がドアを開けて城内にある室内へ戻ると、すぐ近くにいる紘登が驚いたような表情をこちらへ向けた。 「亜澄……綺麗だよ」 「あ、ありがとう」  初めて着る、レースのついたAラインのカクテルドレス。髪は縦ロールにセットされ、淡いピンク色のメイクに、自分でも鏡を見せてもらい驚いた。紘登の熱いまなざしに戸惑い、思わず視線の先を千帆の方へ逃れる。それに気づき、紘登が千帆に声をかけた。 「千帆ちゃんも、プリンセスみたいにかわいくなったね」 「あのね、ヒロ! お部屋にドレスがいい~っぱいあった!!」  髪をアップして輝くティアラを乗せ、綺麗なドレスを着せてもらった千帆は、クルクルとその場で回ってみせた。すると、急に紘登が千帆に近づき背後に回り込んで顔を近寄せる。 「あ、あぁ。髪型も綺麗にセットしてもらったね。これなら立派なプリンセスだ」 「うん!!」  千帆が勢いよく返事をする。なぜか紘登は千帆の髪を軽く触り、表情を曇らせた。
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