1788人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
「どうしたの? 千帆の髪型でおかしなところでもあった?」
「いや……何も問題ない」
心配になって尋ねてみるけれど、紘登は作ったような笑顔を浮かべるだけだった。
その時、大きなカメラを抱えた五十代くらいの男性が目の前に現れた。
「千帆ちゃん、カメラのほう向いてくれる?」
千帆は言われた通りに顔をカメラへ向けると、パチリとシャッター音を響かせた。
「いいね! 目元がクリッとして、かわいらしい顔立ちだ。ドレスがよく似合ってるよ」
カメラマンの声に、千帆は嬉しそうな表情を浮かべる。
「彼は昔からの知り合いで、カメラマンをしている安西さんだ。何かイベントがある時に、カメラで記録してもらっている」
写真を撮り終わると、さっそくCM撮影の説明を受けた。窓際に二人が立っているシーンから始まる。特に演技指導などはなく、背後から撮影されるだけだった。その後、千帆は園内を回りながら撮影を進めていくらしい。
人見知りの少ない千帆は、女性スタッフに導かれ、こちらに手を振りながら部屋を出ていく。残ったのは私と紘登だけだった。
「そ、それじゃあ私、そろそろ着替えてこようかな」
「せっかくドレスアップしたんだ。せめて今日はこのまま過ごしたらどうだ?」
最初のコメントを投稿しよう!