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「そんなのおかしいよ。私だけこんな格好で……。ところで、紘登は撮影について行かなくてもいいの?」
「監督に任せてあるから、最後に確認すればいいことになってる。それに、今は亜澄を見ていたい」
紘登の言葉に少し戸惑いを覚えた。
ずっとこんな風に、紘登のそばにいて大丈夫なのだろうか?
「いつまでも二人でいたら、仕事に差し障りがあるでしょ。それに、私が紘登のそばをうろちょろしてたら、誤解されて……」
紘登が急にこちらへ近づき、私の腕を掴んだ。
「秘書にからかわれたよ。こんなにあからさまにされると、周りにも疑われるってね」
「やっぱり迷惑なんじゃ……」
「それでいい。今は誤解されるため、二人きりになったんだ」
私は視線をどこへやっていいのか分からなくなった。
「俺が結婚を考える唯一の相手だと言ったら、それ以上誰も問わなくなったよ」
「紘登……」
このまま何も考えず、彼の胸に飛び込めたなら……。
そんなのできるわけないことぐらい、自分が一番よくわかっている。
「昼に撮影チームと合流するから、それまでは二人で少し園内を回ろう。行くぞ」
手を取られて、部屋の外へ出た。人の目があるから、そっと手を引っ込める。先に進む紘登が振り返った。
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