1782人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
「どうした?」
「一緒に園内を回るのはいいけど、手を繋いでいたら人の目もあるし、まずいよ」
「そうか……わかった。それなら、二人きりになれるスポットへ行けばいいんだな」
「そ、そうじゃないってば」
紘登がスーツのポケットから園内マップを取り出し、嬉しそう表情で調べ始めている。まるで子どもが初めてここへ遊びに来ているかのようだ。私はその様子に吹き出しそうになった。
さっそく向かったのはデートスポットで定番のゴーストハウスだった。二人で車のような乗り物に座り、ゴーストを捕まえていくライド式アトラクションだ。
園内ではドレスを着て乗り物を楽しむ人もいるから、私の格好に違和感はないらしい。スタッフがすぐに案内してくれて、ほとんど並ばずに乗ることができた。とっさに隣に座る紘登の顔を見つめる。
「もしかして、これって私たちだけ特別に早く乗せてもらっているの?」
「ごめん。ちょっとだけ立場を利用した」
「並んでいる人に悪いよ。こんなことまでして乗らなくても……」
「亜澄にそう言われると……困ったな。今日は時間が限られていたから。気分を害するとは考えなかった」
明らかにテンションが下がってしまった紘登におかしくなって、クスクスと笑ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!