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「何だねこれは? 学業に関係ない物は、持ってこないようにと言っているだろう」
加奈子と友人は顔を見合わせる。
わざと大きな声で「「おはよーございまーす」」と朝の挨拶をしながら、その横を通り過ぎる。そして、生活指導の先生が手に持っている物をチラッと盗み見た。
すると先生の手には、赤と緑のリボンでラッピングされた金色の包みが握られていた。
「三年〇組、○○!式が終わったら、生活指導室に来なさい」
と言う先生の声に次いで、
「はーい!」と言う、妙に明るい生徒の声が、朝もやの中に響き渡った。
加奈子と友人は、顔を見合わせ「わざと? わざとだよね、あれ」とか「あれかぁ、ああいうふうにねぇ、凄いよね」とか言いながら、ちょっと楽しくなってしまった。
今となっては、わざと捕まりに行く気持ちも、分からなくもないのだから。
他人事ながら「上手くいくといいよね」なんて、再び友人と顔を見合わせて笑った。
――今なら、少しだけ自分を好きになってもいいかな……――
そんな事を考える。
冷たい朝の空気の中、頬を上気させながら加奈子は正門を抜けて行った。
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