死後の仕事

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「今回の対象者は、92歳の女性。寿命での死亡、だったな」  キリトは、アカツキの今回の対象者の情報を確認する。 「小さなアパートで独り暮らしでしたね。旦那さんに先立たれて……」  アカツキは、見てきた部屋の様子を思い出しながら話す。 「娘が一人、孫が二人。離れて暮らしているがそこそこ交流はあったようだな。息子も一人いたが、幼少期に事故で他界……。現世への未練はあまり無さそうだがなぁ」  キリトがそう続けた。やつらに連れて行かれて、そのままついていったなら、よっぽどの未練があると思ったのだが、それらしき情報が見当たらない。 「キリトさん、俺、どうしましょう?」  対象者の情報を確認しているキリトに、アカツキは少し焦り気味に今後の対応について促した。 「ん? ああ……仕事ちょっと減らすから、仕事しつつ、彼女の居場所も探してくれ。本当にやつらについて行ったんなら、現状俺達ができることは無いに等しいが、ただ辺りをさまよっていて、お前が見落としただけなら早く連れてきてやらんとな……現世にとどまっていたって、できることなんかないんだから。全く、お前が5分前行動さえしていればこんなことには……」 「わかりました」  キリトの言葉に棘を感じ、さらにこのまま小言が続く気配を感じ、アカツキはさっと返事をして、その場をあとにした。 「ったく……」  アカツキの姿を見送り、なんだか釈然としないキリトは、再びいなくなった対象者の情報を確認する。 「……対象者の名は、北見(きたみ)さとえ。息子の名は(ゆたか)。……北見豊。ん? どっかで聞いた気が……」  キリトの呟きを聞いていた者は、誰もいない。
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