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「ほら、庭を見て見ろ」
鈴は下から見上げてくる怖い目つきの鬼に震えつつ、顔を前に向ける。
そこには夜の庭園なのに、ぽつぽつと空中に青い火が付いていた。
それは鬼火なのだが、本来は人や動物などの霊であり、それをアスラは好き勝手に扱うことが出来る。
鬼火である事は鈴にもわかった。
だがそこから見える光景はなんとも美しい。
季節問わず咲いている花々、実のなっている木。
賑やかにも思える庭に、鬼火はむしろ溶け込むように他の生き物を美しく見せていた。
「綺麗」
ほおっと鈴はその光景を見ながら呟いた。
「綺麗だろう。
また明日になれば陽のあたる庭も観てみると良い。
美しく生き生きとした物を見るのは大切な事だ」
明日の約束。
それはアスラにとって何気ない言葉。
それが捨てられ打ちひしがれていた鈴の心に温かさを灯す。
どうせ食べられるとしても、不思議とアスラなら良いかもしれない。
最後くらい誰かに優しくされた記憶で終わりたい。
気がつけば肩に担がれたまま、鈴はうつらうつらとしながら眠りに抗っていた。
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