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自分の事などより、家族の方が所詮は良いのか。
アスラの中によどみが生まれた。
それが不快でたまらない。
鈴が原因なのだから、きっと鈴を捨てればこの気持ち悪さも消えるはずだ。
「・・・・・・帰るにはあやかしを滅した証しを持ってくるのであったな」
そう言えばそういう約束だった。
鈴はすっかりその約束を忘れ、ただあやかしと他の方法で歩み寄れる可能性を伝えたい一心だった。
確かにあの父親が何も持たず帰ってきて家に入れてくれるとは思えない。
「あの、アスラの家の外でその、何かを」
「シグ」
アスラに迷惑を掛けない場所で弱いあやかしを倒せないか許可を得ようと思えば、アスラの呼んだ声にすぐさまシグが現れた。
「ご用でしょうか」
「あの火を一つ、鈴に持たせてやれ。
これから家に帰る手土産だ」
「かしこまりました」
シグは頭を下げたままちらりと鈴に視線をよこす。
その視線は冷たく、ようやく面倒なのがいなくなるのかという安堵も含まれていた。
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