夜叉鬼の鈴

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必死に話す鈴に、次郎はすべての合点がいった。 あやかしに洗脳されたのだ。 食事を与えられ、良い生活をして優しくする。 そうすれば相手は気を許して自分たちの言いなりになるのだ。 陰陽師でありながらこんなにも簡単に懐柔されるとは。 自分の娘ながら情けない話。 だがこんなに美しくして戻したところ見ると、これで男の陰陽師達を揺さぶるつもりなのだろう。 既に鈴を見た男達が色めきだっている。 あやかしは、特に鬼は強ければ強いほど美しい。 その妖艶さで人間を懐柔するのだ。 強い鬼に匿われていたとなれば相当な美しさだろう。 それに現を抜かすとは。 格子に捕まり訴える鈴を見て次郎は思いついた。 これを逆に使ってやればいいのだ。 きっとここに幽閉していれば、鬼の使いが様子を見に来るかも知れない。 鈴が人間を取り込めたかどうかを。
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