夜叉鬼の鈴

45/65
前へ
/65ページ
次へ
美しいものがあれば愛でたい。 自分のものならなおさら。 なのに鈴はそんなアスラの変化に気づくことも無く、あやかしと陰陽師の橋渡しをしたいなどと言い出した。 裏切られた気がした。 結局は人間の元に返りたいのではないかと。 あんなにかわいがったのに。 あんなに楽しそうに笑うようになったのに。 その反動かアスラは自分でも抑えきれない怒りに変わり、鈴をここから追い出してしまった。 でも思っていたのだ、きっと自分を恋しがるのではないだろうか、何かあれば自分を呼ぶはずだと。 なのにその声はアスラの耳に届かない。 それがアスラの機嫌をより悪くしていた。 「アスラ様」 「放っておけ」 不機嫌な声にシグは頭を下げて下がった。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

173人が本棚に入れています
本棚に追加