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「似合っておるぞ、その着物」
男の言葉に鈴が戸惑っていると、
「その着物はその方が用意されたものだ。
お前がそちらの屋敷で過ごすのに不都合が無いよう用意して下さったのだぞ。
礼を言いなさい」
鈴は父親の言葉の意味がわからない。
言葉は聞き取れたけれど意味がわからないのだ。
そちらの屋敷で過ごす?それは一体。
「では私はこれで。
約束は守って頂きますぞ」
次郎が立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
「わかっている。
今宵楽しんだら残りは明日払おう」
「お父様?!」
鈴が立ち上がろうとしたのを男が腰に手を回して引っ張れば、あっという間に男に抱きしめられた。
「誰も近寄らせるなよ?」
男がそういうと、次郎は頷いて障子を閉めた、一切鈴を見ることも無く。
鈴は自分の状況が飲み込めず、男の腕の中で固まっていた。
まさか自分が売られ、支払いの半分は鈴を抱いてからになっているなどと思いもしないだろう。
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