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「アスラ!!!」
鈴の大きな声に男は驚くが、何の言葉なのかわからない。
「はは、もしや呪文かなにかか?
式神でも呼ぼうとしたのだろうがお前に力は無いのだろう?諦めよ」
鈴は口を引き結び、キッと男を睨みあげる。
だが次の瞬間男は鈴の視界から消えていて、大きな音とともに隣のふすまに男は突き刺さっていた。
「遅いではないか」
その声に鈴は恐る恐る顔を上げる。
金の髪をなびかせたアスラが、腕を組んで鈴を見下ろしていた。
「アスラ!」
「早く呼べば良かったものを。相変わらず強情な」
「だって」
だって、呼んだら迷惑をかけてしまうから。
なのにたった一度呼んだだけで来てくれた。
「また泣いているのか、お前は本当に泣き虫だな」
この家に来て何をされようとも絶対に泣くものかと鈴は思っていたのに、アスラを前にすればその決意はあっという間に崩れた。
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