夜叉鬼の鈴

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アスラが手を伸ばし、鈴も手を伸ばす。 アスラは満足したような顔で鈴を引き上げて片腕に担いだ。 鈴は髪を引っ張らないように、そっと肩に手を置く。 「ごめんなさい、お父様とは話が出来なかったの。 もっと陰陽師とあやかしが歩み寄れる方法があるかもって思ったのに」 俯く鈴に、本当にそんな気持ちで元の家に戻ったと確信できてアスラの中にある何か黒いモヤがあっという間に消えてしまった気がした。 「いい。お前の頭がめでたいのは今に始まったわけじゃ無い」 馬鹿にするような言葉なのに、その声はとても優しい。 「会いたかった」 思わず鈴はつぶやいてアスラの髪に頬を寄せる。 相手はあやかし、それも鬼。 陰陽師としては一番相対する相手なのに、どうしてこんなにもこの場所は落ち着くのだろう。 自分の髪へ頬を寄せる鈴に、アスラは手を伸ばしその頬を触る。 鈴は先ほどの男には気持ち悪さしか感じなかったのに、アスラが自分に触れればそれだけでほっとしてしまうのが不思議だ。
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