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「こんな親でもお前にとっては親か」
アスラの言葉に鈴は穏やかな表情になる。
「母は死んでもうお父様しかいないから」
「俺がいるだろう?」
鈴はアスラの言葉に目を開く。
「これからは俺がいる。
家族が欲しいのならそうすればいい。
だがそれでもお前はこの男を殺したくは無いのだろうな」
アスラを見上げ涙を流す鈴に、アスラはその涙をそっと指ですくう。
そして次郎の方を向いた。
「お前達が生きられるのはお前達が虐げた娘の温情によるものだ。
その命、誰に与えられたかよく肝に銘じて生きることだな」
行くぞ、とアスラは優しく鈴を抱え上げた。
「鈴」
次郎が声をかけ手を伸ばす。
鈴はふわりと微笑み、その場からアスラ達とともに消えた。
その場には未だ倒れた男や、緊張の糸が途切れ泣き出す者などで様々。
次郎は天を仰ぎ、運命とはこういうことか、と呟いた。
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