8.

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泣いているアシェルの肩を抱いてハンカチで涙を拭いてあげているルイスを見つめながら、混乱する頭を必死に動かす。   ルイスは王太子だからここに入れたのか?追ってきたってどういうことだ?疑問は沢山浮かぶけれど、ただ1つルイスと関わって分かっていることは彼はアシェルに拘っているということだ。   「アシェル帰るよ」 「……僕まだマテオと話したいことがあって」 「駄目だよ」 「でもっ……」 有無を言わせないルイスの態度に違和感を覚える。まるで自分意外とアシェルが話すのが嫌みたいな感じだ。 「ルイス、俺もまだアシェルと話したいことがあるんだ」 アシェルの気持ちを尊重してあげたくて助け舟を出したら、ルイスが未だに感情の篭っていない瞳で俺の事を見つめ返してきた。 「駄目だって言っているでしょう?」 「……でも、まだ昼間だし、来たばかりなんだからゆっくりしていけばいいと思う」 何となく引けなくて言い返してみたけど、ルイスが俺の事を無言で睨みつけてきたことで何も言えなくなった。その瞳がまるで親の仇でも見るみたいに鋭く剣呑な雰囲気を宿していたから。   いつもニコニコしているルイスとまるで別人の様だと感じた。 「アシェル行くよ」 無理矢理アシェルを立たせたルイスが手を引いて部屋の外に出ていこうとする。   慌ててそれを止めようと立ち上がったけれど、ルイスは1度俺に視線を向けると、直ぐに視線を前へと戻して俺の横を通り過ぎて行った。   その時に、耳元で囁かれた言葉を聞いて背中に嫌な感じが走って、ルイスとアシェルが部屋から出て行った瞬間、身体から力が抜けて椅子にストンっと尻をついた。 「……アシェル……」 きっとアシェルはもうここには来ない。それどころか彼と話す機会ももう無くなるかもしれないと思った。話せたとしてもその横にはきっとルイスが居るはずだ。   言われた言葉がアカの様に俺の耳の中にこびりついている気がする。 『アシェルには僕以外のモノは不要だよ』 彼がどうしてアシェルに執着しているのかは分からない。けれど、レオニードとはまた違った執着の形に怖いと素直に思ってしまった。   アシェルは大丈夫なのだろうか……。心配になるけれど、彼に手を差し伸べることは俺にもレオニードにも出来ないから、頑張れって無責任なエールを送ることしか出来なかった。
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