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素直な気持ちを伝えあってから、レオニードは前ほど俺の事を縛ることは無くなった。部屋を分けることは頑なに嫌がったけれど、外に出ることは許してくれているし、政務も執務室でするようになった。
まだ前世が原因のトラウマや執着は消えないけれど、いつか少しでもそれが薄れてくれればいいと思ってる。
「マテオ愛してる」
朝、目が覚めた俺の頬にキスをしながらそう言ってきたレオニードに俺も愛してるよって返した。
俺の事をマテオと呼んで手を取ってくれた時から、愛の言葉を囁く時は必ずマテオと呼んでくれるようになった。そのことが俺にとっては凄く嬉しくて、名前を呼ばれる度に心臓がドキドキしてしまう。
「今日は出掛ける用事があるから帰ってくるまで待っていて欲しい」
「うん。気をつけて行ってこいよ」
レオニードの首に腕を回して、ちゅって音を鳴らしながらキスをする。大好きなホワイトムスクの香りを胸いっぱいに吸い込むと、今日も1日頑張れるって思えるんだ。
出かけるために部屋から出ていったレオニードの背中を見送ってから、俺も伸びをしてベッドから出た。待機していたメイドさん達が身の回りの世話をしてくれて、寝間着からレオニードが用意してくれている服へと着替える。
相変わらずリボンやフリル部分にあるラインにはレオニードの瞳の色と同じ物が使われていておもわず苦笑いした。
レオニードの色を纏えるのは嬉しいけれど、レオニードは隙あらばお揃いにしのうとするから恥ずかしかったりもする。彼は共有するのが大好きみたいだ。
公爵家の歴史が書かれた本を読みながらテラスでまったりとしていると、なにやら外が騒がしいことに気がついて本を読む手を止めた。
「どうかしたのかな?」
ターニャに尋ねてみたけど、彼女も分からないみたいで、一緒に公爵家の入口まで向かうことにした。
「だからっ!どうして会わせてくれないんだよ!!!僕はこの国の王子なんだよ!?」
聞き覚えのある声が耳に届いて、続いて見覚えのある人形みたいな綺麗な顔が視界に入った。
思わず、なにしてるの?って尋ねてしまう。そうしたら、俺に気がついた彼がこっちを見て驚いた表情を浮かべた。
「お前に会いに来たんだよ!」
「え、俺??レオニードじゃなくて?」
「そうだよ!とにかくこいつらどうにかしてっ」
アシェルを中に入れないようにしていた使用人の男性に、大丈夫だからと伝えると、渋々ながら中に入れてくれた。
きっとレオニードに誰もいれるなと言われてるんだろうなって思う。この人が怒られないように後でレオニードに言っておかないと。
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