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桜の下で死んだ
ここから綴ることは、死んだ小説家の人生についてだ。
そいつの名前を、私は知らない。
そいつの素性を、私は知らない。
私は奴を、先生、とだけ呼び、奴は私の名を一度も呼ばずに死んでいった。
先生は小説家だと自分を紹介したが、私は彼の小説を読んだことはない。
嘘つきだった。
先生はどこまでも嘘つきだった。
それだけは確かだったが、今になってしまえばそんなことはどうでもいいとさえ思える。
先生は小説家だった。
そして、死んだ。
綺麗な、綺麗な。
薄紅色の幻想の下で死んでいった。
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