桜の下で死んだ

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何故、私が今こんな奴の回顧録のような。 なんとも言えない、ものを綴っているのか。 最初に語るべきだったのにすっかり忘れていった。 そもそも、こんな羽目になったのは奴のせいなのだ。 こうぐだぐだと文章が続くことに関しては、奴にクレームを入れて欲しい。 私は小説家ではないのだから。 奴はこの汚部屋――汚部屋と言ったら怒られそうだな――に私と、そしてゴミを置いていった。 その他残したものはない。 あまりに、釈然としなかった。 奴がいたという証拠は、私とゴミ以外には知り得ないのだ。 奴の葬式には誰も来なかった。 そもそも葬式など行われなかった。 奴の身体はどこにも無くなってしまったから。 誰もこの部屋を訪れない。 誰も、奴の名を呼ばない。 誰も奴のことを思い出さない。 そして、私のことも。 あまりにそれは癪だ。 私がいなくなれば、ゴミが朽ちてしまえば、奴がいた証拠はどこにもなくなってしまう。 私は奴によって、生きてきた道をねじ曲げられて、不承不承この部屋に棲みつかなければなくなったというのに。 その不満をぶつける相手が居なくなってしまうというのは。 どこにも居なくなって、そして一炊の夢のように消えてしまうというのはあまりに釈然としない。
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