初恋

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そして放課後私達はアイス屋さんに寄って楽しくお喋りした後、駅で別れた 思わず食べすぎちゃった…夜ご飯食べられるかな そんな事を考えながら改札を潜ろうとすると 「すみません。少しいいですか」 「はい?」 背後から、三十代位の男性が声を掛けて来た よく見るとかなりのイケメンでスーツ姿だったので瞬時に怪しい勧誘かと疑いを持つ 「あの!私お金ありませんから!」 私は機先を制すように大きな声で男性を突っ撥ねた うちは父子家庭で、お母さんは私が小さい時に亡くなっている だから私も進学せずに少しでもお父さんの支えになりたいと思い就職を希望した それなのに、怪しい壺や絵を買う余裕なんてあるはずがない 強い否定の眼差しで睨み付ける私に 男性は少し微笑みながら返した 「…安心してください。勧誘とかじゃないです。実はお願いなんですが、少し携帯をお借りできませんか?急ぎの用がありまして」 「公衆電話じゃダメなんですか?」 「それが財布も家に忘れちゃったんですよ」 なのに駅まで気付かなかったの?顔に似合わずドジな人なのかな… そもそもこんなに人がいるのになんで私なの? まあ電話貸すくらいいいか… まだ疑いと疑念を抱きつつも、七瀬を見習わなければと思っていた矢先だった私は仕方なく男性に携帯を貸した 「ありがとうございます!すぐ済ませますので」 宣言通り、携帯を貸してからものの数十秒で男性は通話を終えて返してくれる 「本当に助かりました。ありがとうございます。このお礼は必ずします」 「いやいいですよ!」 「僕の気が済みませんから。またご連絡しますので是非連絡先を教えて下さい」 「いや、本当に大丈夫なんで!気にしないで下さい!」 もしかしてナンパの手法だったのかと思った私は連絡先も教えずに早々とホームに駆け込みちょうど現れた電車に乗り込んだ そして電車の窓から景色を眺めながら男性の顔を思い起こす …すごいカッコいい人だったな。背も高くて品もあってまるで俳優さんみたいだった 私なんかに声を掛けなくても絶対モテそうなのに… もしかしたら本当にナンパなんかじゃ無かったのかも知れない
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