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「絶対ナンパだよそれ!」
翌日七瀬にその話をすると、七瀬はそう断言した
「でも本当にすごいカッコいい人だったんだよ」
「て言っても三十代くらいだったんでしょ?若い子との出会いなんてあんまりないだろうし、ちさはモテるんだから!声掛けられてもおかしくないよ」
「そんなものなのかな…」
「気を付けてね!悪い人かも知れないし簡単に引っかかっちゃダメだよ!」
心配症だな七瀬は…
「まあ気を付けるよ」
ーーーそう忠告を受けた矢先に
男性はまた駅で立っていた
そして私を見つけるや否やすぐに声を掛けて来た
「こんにちは!昨日はどうも!」
「…こんにちは」
「そんなに警戒しないでください。ナンパとかじゃないですから。本当にお礼がしたいだけです。なんならそこのカフェでも大丈夫です」
「じゃあ…お茶くらいなら」
今日はお父さんも遅いし夜ご飯いらないって言ってたから大丈夫だろう
「では行きましょうか」
男性に案内されたのは、少し古めかしい感じのする落ち着いたカフェだった
看板には【テグロフ】と書かれている
「ここのコーヒー美味しいんですよ」
「…そうなんですか」
店内は意外にもお客さんが一杯入っていた
人気なんだ…ここ
「いらっしゃいませ。どうぞ」
店員さんに案内されて奥の席に座ると、男性は上着を脱ぎ口を開いた
「自己紹介がまだでしたね、すみません。僕の名前は春宮といいます」
「…和島千暁です」
「一応、こういった会社で社長をしています」
男性は名刺を差し出しながらそう言った
え?社長!?
その言葉に一瞬耳を疑ったけれど
それよりも私はすぐに目を疑った
何故ならその名刺には
株式会社清彩蔵と書いてあったからだ
清彩蔵代表取締役社長 春宮 詩音
嘘でしょ…
まさかこの人が…
七瀬の内定が決まってる会社の社長だったとは……!
「キヨザクラってあのキヨザクラですよね??」
「ウチを知ってくれてるんですね」
「父が酒豪ですから…いや、そもそも飲まない人でも大抵知ってますよ!超有名じゃないですか!」
「ハハ、それは良かった」
…にわかに信じられない
私今、清彩蔵の社長と向かい合って話をしているの??
夢みたいな話だ
「とりあえず何か頼みましょう。何がいいですか?」
「あ、じゃあホットコーヒーで」
「遠慮せずに食べ物もどうぞ」
「えっとじゃあ…フレンチトーストもいいですか?」
清彩蔵の社長だし…少しくらいはいいよね…
私はお言葉に甘える事にした
「すみません、ホットコーヒー二つとフレンチトースト二つで」
「え!?社長も食べるんですか!?」
「二人で食べた方が美味しいですよきっと。後社長はやめてください」
「でも…」
「肩書きは会社の中だけで十分ですから」
「じゃあ…春宮さん?」
「はい?」
…めちゃくちゃかっこいいなこの人
笑った顔が映画のワンシーンみたい…
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