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 大型の遊具は子どもがたくさん遊んでいても、入れ代わり立ち代わり遊んでいるのであまり気にならないのかもしれない。 (だけどーー) 「ダメだよ! 約束したでしょ! あの大きな遊具はもっと大きなお姉ちゃんとかお兄ちゃんにならないと遊べないって! 約束守れないなら家にーー」  そこで柊奈乃は気がついた。紬希がまたびっくりして動けないでいたことを。自分は肩を揺らしてつい、怒鳴ってしまっていたことを。 「ごめん、紬希……」  強張った体を抱き締め、優しく頭を撫でる。遊びたいと思うのは自然なことで、紬希はただ思いを言葉にしただけ。 (それなのに私はまた) 「ごめんね」 「……うん、ママ、だいじょうぶ」  腕を放しても落ち着かず柊奈乃は頭をなで続けていた。以前からこの繰り返しだった。少しでも危ないことはなるべく避けるようにしてきたし、紬希が危険な行動を取ろうとすると頭の中が真っ白になってしまう。目の届く範囲にいてくれたときはさほど気にならなかったが、あっちこっちへと動けるようにこの3歳くらいになると、つい声を荒らげてしまう回数が増えていた。 「ママ、でんわ」 「あっ、うん」  スマホを取り出して画面を見れば「辻圭斗(けいと)」の文字が表示されていた。 (え、今仕事中だよね……緊急の電話?) 「ごめんね、パパからだ。紬希、ここにいてね」  通話ボタンを押す。電話の周りはガヤガヤとうるさく、聞こえ漏れてくる声の感じからやはり職場からだということがうかがえた。 「なに? どうしたの?」 「いや〜あのさ。ちなみに今どこ?」  嫌な予感がする。圭斗がすぐに用件を言わないときはだいたい何か問題があったときだ。そして、残念ながら柊奈乃のその予感は的中した。 「悪い。明日、休めなくなった」 「え? ……ごめん、どういうことかな?」 「仕事がさ。急用が入ってしまったんだ。ごめん」 「ごめんって……明日はハンドメイドの即売会があるって、前から言ってたじゃーー」 「あー悪いって。しょうがないだろ、こっちは仕事なんだから。じゃあ、あの、今度美味しいものでも食べに行こう、それじゃ!」  切られてしまった。一方的にしゃべられて。開いた口が塞がらないとはこのことだ。 (だって、前から、半年も前から紬希をお願いしてたんだよ? 自分は仕事って、私だって、私だってーー)  小さな口からため息が出た。もしかしたら圭斗は約束を忘れていたのかもしれない。それか、覚えていたけどなかなか休みを言えなくて。 (まあ、いいや。今に始まったことじゃないし。ちょっと大変かもだけど、紬希を連れていけないわけじゃないし) 「あれ?」  電話の前までそこにいたはずの紬希の姿が消えていた。
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