185人が本棚に入れています
本棚に追加
/370ページ
「え、これを耳の中へ入れるんですか?」
そういう薬なのだと、理解した。それは私も怖い。
「頼む!」
「えぇ……」
自分でこの液体を入れるのも怖い。でも、自分でこれを入れるのも怖い。けれども頼まれたのを断る訳にもいかなかった。早速蓋を開け右手に持ち、薬を軽く押す。液体が一滴流れ、バロンさんの耳へ入って行く。
「おぉ、ありがとう。ティッシュを取ってくれ。これで五分はこのままにしとかな、あかんのや」
「分かりました」
早速、デスクの上にある『エリエール』の箱から二枚取り出し、手渡した。
「バロンさん、お疲れ様でした。それで収穫はいかがでしたか?」
麗子さんが私の背後から、顔をのぞかせた。勿論、耳鼻科での診察も大事だが、メインはそれだ。
最初のコメントを投稿しよう!