神の遣い

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「答えよ、舞鶴六花。 我らと共に行くのか否かを」 「ま、待ってくれ! そんな急には答えられない! そもそも審判の日ってなんだよ! 皆死ぬのか!? 家族も友達も! 頼む、それだけでも…………うっ!」  捲し立てる最中、ミカエルは何処からともなく現れた光の粒子を右手に集め、白銀の剣へと変化。  その剣の切っ先を、俺の喉元に突きつけてきた。 「貴様の問いに答えんと言った。 貴様がすべきはこちらの問いに回答するのみ……」 「頼むよ、それだけ教えてくれ。 聞いたらすぐ答える。 だから頼む。 家族や友達も連れていっちゃダメなのか? 俺だけなのか?」  正直、殺されると思った。  それすら承知の上の問い掛けだった。    もしも本当に三日後皆死んでしまうなら、今殺されても同じだと思ったからだ。  自分だけ助かって、皆を見殺しにするなんて俺には出来ない。  その心からの言葉がミカエルに届いたのか。  彼女は剣を引き、一言だけ答えてくれた。 「不可能だ」 「……そうか」  予想はしていたが、やはり連れていけないのか。  なら俺の答えは決まっている。 「答えてやった。 次は貴様の番だ。 今すぐ答えを……」 「行かない。 皆を残して自分だけ助かる気はない」 「……ふん、愚かな男だ。 自ら死を選ぶとはな」  俺の答えに満足したミカエルは踵を返し、亀裂へと向かう。  きっと彼女にとって舞鶴六花は重要ではなく、主神から与えられた仕事なり使命なりに従っていただけなのだろう。  最早興味も失せたミカエルは一瞥もくれない。  だが亀裂に触れた刹那。  行ってしまう前にミカエルは最後にこう言ってきた。 「せいぜい残り少ない余生を悔いの残らないよう使うのだな。 ではさらばだ、もう会う事もあるまい」  ──と。  嫌なやつ。  
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