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「ねえ、行こうよ行こうよー!」
「ああもう、服引っ張んなよ! 伸びる!」
正直めちゃくちゃ行きたくない。
どうやって全人類を殺すつもりか知らないが、近づけば近づく程死ぬ確率は上がるだろう。
出来れば遠くに行きたいくらいだ。
しかしこうなった咲は言うことなんか聞きやしない。
一人ででも深夜バスで行く可能性がある。
それはまずい。
明日には滅ぶかもしれんが、その前に酷い目に遭わせたくもない。
…………くそ。
「わかった! 一緒に行ってやるからいい加減離せ!」
「ほんと!? やったー! 六花大好きー!」
「おまっ、抱きつくなよ! あたってるぞ、色々と!」
「お礼代わりだよー。 存分に堪能して、わたしに女を感じちゃえ!」
もう十分感じてます、勘弁してください。
にしても咲と深夜バス旅行か。
何事も無ければ良いのだが。
「──東京……とうちゃーくっ! 憧れの東京! 絶世の美少女と言われるわたしが、やってきたぞー! ふぅー!」
────着いちゃった。
何事もなく着いちゃった。
俺だって思春期男子。
興味ないフリをしていても、お互い18歳ともなればいやでも意識してしまう。
去年ぐらいから色気も出てきて、ふとした瞬間にドキッとさせられるし。
だから少し期待していたのだが、意外にも咲のガードが固かった。
普段は好意を匂わせている癖に、いざそういう空気になると逃げられてしまう。
お陰様で色々たまって辛い。
「って……顔色悪いけど、どうしたの? バス酔い?」
「……そんなとこだ」
「ふーん、大変だね」
自分から誘ったのに扱いが雑。
気持ちはわからないでも無いが。
こんな物を目の当たりにしたら、他事なんて置いておきたくもなる。
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