終焉への序章

3/7
前へ
/63ページ
次へ
「これが神の柱かぁ。 すっごいでっかいんだけど」  こんな常軌を逸した建造物を目の当たりにしたら、圧倒されてしまってもおかしくない。   「天辺がギリギリ雲を突き抜けてる……。 富士山以上の高さだぞ、これ」 「だねー」  テレビで毎日目にしていたが、こうして実際見てみると神の柱の異様さをアリアリと感じられる。  壁の材質は一見すると陶磁器に酷似しているが、鉄や鋼のような冷たさがある。  こんな材質の素材は恐らく地球上には存在しない。  正面に見えているのが、開かずの扉と噂される入り口だろうか。  ……ふむ、本当にあれは扉なのか?  継ぎ目も何も無く、ただの壁にしか見えないが。  だが唯一違和感のある場所は彼処だけだから、扉と思っても仕方なさそうではある。  それよりも尖塔全体を囲む、あのレールの方が気になる。  レールは天高くまで昇っており、各四つ、建造物の下部から伸びている。  そのレール間を上下に動いているあのリング。  各レールに一つずつ通っている、紅、蒼、黄金、漆黒と別々の色で光っているあのリングは一体……。  よく見てみると見覚えの無い文字がびっしり浮き上がっているな。  まるでホログラムだ。   「なんだあのリング。 どんな意味があるんだ」 「それ言ったら神の柱自体がそうじゃない? なんの為にあるのかわかんないし」  確かに。 「……うーん、ここからじゃ下が見づらいなぁ…………あっ! ねえねえ、六花! もう少し近づいてみない!?」 「は……? お前何言って…………おい! 急に引っ張んなよ! それに、あんま近づくと危ないぞ!」  俺の手を取り、神の柱に近づいていく咲に抗うが、彼女はぐいぐい引っ張っていく。  人混みを掻き分けて。 「あははっ、平気だって! 六花ビビりすぎ! はい通りまーす、ごめんなさーい。 ……おっ! 近くなってきたよ、六花!」 「俺は別に行きたくなんか…………ん? なんだ、この音……。 これはもしかして音じゃなくて……歌、か?」  先頭まであと三歩程というところ。  そこまで行くと、なにやら歌が聴こえてきた。  知らない言葉だから内容まではわからないが、オーケストラ調の歌詞だろうか。  どこか静謐で、それでいてどこか気味が悪い感覚に襲われる。  気味が悪いといえば、この直接脳内に響くような歌声もそうだ。  これを聴いてるとなんだか胸がざわつくような……。  
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加