一話

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一話

   久しぶりに乗った新幹線は、思いのほか快適だった――――途中までは。  踏切の故障とか、システムトラブルとか、なんとか。  で、5分くらい止まっている。  急いでいるわけではないけれど、滅多に乗らない新幹線の、きっと、そんなにはない、システムトラブルに巻き込まれるのは、運があるのか無いのか。 「……あらっ」  熟睡していた隣の席の女性が目を覚ました。  周りを見渡し、目が合った私に、視線で状況の説明を催促されたので、「システムトラブルらしいですよ」と一言で説明する。 「ああ、そう……」  口元を手で隠しながら、隠し切れない大きな欠伸をして、首をゆっくりと回す。それからバッグからキャンディを一つ出して、「どうぞ」と私にくれた。 「ありがとうございます」  私は素直にお礼を言って、早速、袋を破って口の中に入れた。  いつもなら知らない人から物は貰わないし、すぐに食べようなんてしないのだが、おばあちゃん子だった私は、脊髄反射的に受け入れてしまった。  ミルクティー味のキャンディだった。  暫くすると、ガタンッと揺れて新幹線が動き出し、車掌の謝罪のアナウンスが流れ出す。  窓の外の景色が動き出して、少しホッとする。 「私、いつも思うんだけど、そんなに謝らなくても、いいのにねぇ」  車掌に同情するように呟くので、「そうですね」と私も同調するように相づちをした。 「どちらまで、行くの?」  寝起きのスッキリした顔で会話が続く。 「……○○までです」  新幹線の降車駅を答えた。それから乗り換えて、二十分くらいまだかかるが、そこまでは言わなくてもいいだろう。 「そうなの、私はその前の駅で降りるのよ」 「××駅ですね」 「ええ、親戚の子が迎えに来てくれるはずなんだけど、少し待たせちゃうわね」 「大丈夫じゃないですか、間に合うように加速しますよ」 「そうね、新幹線だものね」  無責任な会話か聞こえたのか、心なしか加速したような気がした。    途中、トンネルに入った時に、窓に映った自分の顔をまじまじと見た――。
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