91人が本棚に入れています
本棚に追加
怒涛の展開?
「絆!!!!」
ひんやりとしてる身体を膝の上に抱きあげると、小さな呻き声とともに絆の目が開いて、次の瞬間には首に縋りつかれてた。
怒涛の展開っていうかなんていうか。
ただ、とりあえずはっきりしてるのは、無事だってこと、だ。
ぎゅうぎゅうしがみついてくる身体を抱きしめ返し、落ち着いてその背中に視線を落とせば、白っぽいのは毛布で、それを巻きつけてここに居たらしい。
「はぁぁ……びっくりさせんなよ…。心臓がどうにかなるかと思った」
絆は、小さくうーうーと唸って、俺の肩口に額を擦りつけてる。
「絆? ここで寝てたの? ん?」
擦り寄せてくる頭に頬を乗っけて聞いてみたら、絆はコクコクと頷いて、ギュッと、回す腕に力をこめた。
「もしかして、俺、待ってた?」
それには、ただうーうー唸るような声をあげただけで、一層深く額を擦り寄せる。
「ちょ、とりあえず、部屋行こう」
俺は、しがみついたままの絆を毛布ごと抱きあげると、そのまま離れない絆ごとソファーに沈み込んだ。
ちなみにこの毛布は、俺が連泊するようになってから購入したもので、丸洗いができんの。
家の洗濯機で洗えるってのは、それはそれは便利で。
なんでか?
ふふ。なんででしょうねぇ。
「おでこの皮剥けるって。ちょっとこっち向いて?」
ぐりぐり擦りつけてる額を、グッとひきはがしてその顔を覗き込んで、まず驚いたのは、真っ赤な額もさることながら、それ以上に充血した赤い目だった。
そしてそれを見られるのを拒むように、嫌々と首を振って俺の手をはらうと、また肩口に顔を埋めた。
「なんかあった?」
また、一気に不安が胸の中を駆け巡る。
俺のいない間に過去の男がやってきて無体なことをした、とか、そんなんじゃないだろうな!?
けど絆は首を横に振るだけで明確な答えを返すことはなく、ただもう、離さないとばかりにしがみついてるだけだ。
「や…まとぉ。ぎゅってして?」
やっと声になったと思ったら、既に抱き締めてるにもかからずそんな要望で。
「してるよ?」
「や。…もっと…」
駄々をこねるみたいにせがまれるのに、抱き締める腕に一層の力をこめた。
「なあ、絆……さみしかった?」
絆の態度から浮かんだ言葉を口にしてみたら、案の定また、うーうー呻く。
まじ…か。
ジワジワと、なんとも言えない、甘苦しい気持ちが滲んでくる。
「俺も、会いたかったよ?」
夕方がけて会わなかっただけなのに。
それなのに、駆け足するほど、会いたかった。
会わない週があったなんて、もう、考えられないくらい。
「うー……うっ…うぅ」
呻きが、やがて嗚咽に替わるのに、俺は絆の頭のてっぺんに何回もキスを落とした。
「なんで泣くんだよ? なんか、言って?」
ふるふると首を振る絆の顔をまた俺の方に向かせると、髪を梳き、涙でぐしゃぐしゃになった頬にキスをする。
瞼に、反対の頬にと、散らすように唇を当ててから目顔で促せば、絆はやっと口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!