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常春21
「ね。彼女、知ってるの? そういうこと」
犯罪を共有するような表情で俺を覗き込む西松さん。
知ってるも何も。
一時は共に女の子漁って、同じ部屋でご乱交に及んでましたから。
「俺が純愛貫いてるって? そりゃあもう。尽くしてますから」
俺のその言葉をどうとったのか。
西松さんはまあまあ色っぽい目つきを俺に向けた。
「ユウナがね。それはそれは薄情な男だったけど、とにかくアレが上手で優しかったって」
「へぇー」
まあ、男だからな。アッチを誉められて嫌な気はしない。
ただ、あのときのセックスは、身代わりにしてる後ろめたさからか、自分そっちのけで相手を優先してたと思う。
ずっと冷静な俺がいて、行為にハマり込めなくて、相手に失礼だと思ったから、だからせめて気持ちよくなってもらいたくてって感じで。
絆を得られたとき、それまでのセックスはまるで商売してるみたいなもんだって気づかされたんだ。
欲しくて欲しくてたまらなくて。
絆の状態なんておかまいなしに、突っ走ってしまいたくなる。
絆こそ、大事に、優しく、尽くさなきゃいけない相手なのに、自制がきかないってジレンマ。
ああ。考え始めたらまた落ち着かなくなってきたじゃないかっ。
あー、もう。
早く会いてぇーっ。
「ユウナね、ヤキモチ妬いて欲しくて、彼氏ができたって嘘ついたら、心から祝福されて、こりゃダメだってフェイドアウトしたらしいけど、あなた、もともと恋人にはならないって宣言してたんでしょ? じゃあ、ユウナがバカよね」
そこで。
なんとまあ俺の膝の上に西松さんが手を載せてきた。
「日本って、関係もったら付き合うとかなんとかってなるでしょう? 閉鎖的でやりづらいったらなかったから、それ聞いて嬉しくなっちゃって」
そういやあ、どっかヨーロッパからの帰国子女って言ってたっけ。
フリーセックスの国ってか?
いくら声をひそめててもタクシーの中。運転手さんが前にいる状態で、そんな話をふってくるだけじゃなく、俺の中心スレスレまで指這わしてくる西松さんの居た国ってのは、どこだ?
心も体も絆のもんだけど、俺もまだ二十代。物理的な刺激には抗えないから、止めてくれ。
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