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常春24
奥歯を噛み締める俺の肩を、揺さぶるトキワくん。
「わかってるわかってる」
何がわかってるんだとトキワくんを見れば、ハハと声を上げて笑った。
「絆はお前んなんだよな?」
「……!?」
「絆が言ってた。自分はヤマトのだから、裸にはならないって」
「は……いや、つか、裸ぁ!?」
なんかもう、色々いっぱいいっぱいなんですが!?
え。え。え。俺のモンって、言ったの? あいつ? トキワくんに? マジで?
「いや。あんな格好してるとやっぱ女の子に見えるだろ? だからジャケットの中でな、裸だったら面白いかなぁ……」
「オモシロイ!?」
「いや、言葉のアヤ、な。意表をつける趣向ってこと。けど断られたから、もうジャケットの表紙で胸あけることになったんだけど、いやぁ、俺、そっちの趣味ないんだけどさ。はは。倒錯的でたまんないよね」
倒錯的でたまんないだと!?
なんで鼻の下伸ばしてんだっ!!
「エロい目で見るなっ!! ボケっ!! つか、もう中止中止っ!! あんなのダメだからなっ!!! そうだ! 俺のもんなんだから!! 俺は反対するっ!! もう、中止っ!!!!!」
あんな最高の姿を、他の誰にも見せたくないっ!
なのによりにもよって人目につくCDジャケットってなんだ、それはっ!!
トキワくんの腕を振り払って部屋に戻ろうとしたときだった。
「山登、うるさい」
顔のパーツの本来持つ美しさを損なわせず、その良さを120%に伸ばすように施された化粧。
それこそもう、吸い込まれてしまうほどの麗しさに、心臓がうるさい。
髪紐で片側一つに結ばれた長髪はエクステなんだろうけど、不自然さの欠片もない後れ毛が妙に艶めかしく、襟を抜いた緋の襦袢からみえる白い肌は、近くでみると顔同様、薄っすら白粉をはたいてあるのが見て取れた。
「おまっ! それっ! なんちゅうっ!!」
見蕩れて文句を言い損なう俺の首に、絆の手がすっと伸ばされる。
冷たくもしなやかな指先に、腰に痺れが走った。
「何? いつもみたいに、可愛い、とか、綺麗、とか───」
赤い唇の端をあげ、艶冶な微笑みを纏わせる絆。
ぁああ。
もう。
「──言ってくれないの?」
今すぐ。
食いたい。
「……無理……」
「なんでよ」
ちょっと拗ねたように上目で睨んでくるのに、理性っていう名の神経が、焼き切れそうだ。
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