指紋と愛嬌

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指紋と愛嬌

 濃厚アイスと負けず劣らすの濃厚なキスのおかげで程良い時間が経過してスプーンの通りのよくなったアイスを、満面の笑みで食べてる絆。  完全に溶けるまでの行為に至らなかったのは、ひとえに明後日から始まる大学の為だ。  それこそここ数日部屋の中にこもりっきりだったから、最後の休みになる明日は二人でどっか出かけたいってのがあって、そうなるとエントリーシートを今夜中に書き直す必要がある。  とりあえず絆が落ち着いたら寝かせて、地方の企業用に作ってたの軌道修正しないといけないからな。 「これ、なに?」  まだ目を赤く染めた絆が、俺が自分用に買ったペットボトルの紅茶についてたオマケを指でつつく。 「んー?なんだろ。あぁ、液晶クリーナーだってさ」  黄色とオレンジの格子模様のそれをつり下げタイプの袋から取り出して、自分のスマホの画面を拭ってみた。 「おお。綺麗綺麗。どんだけ指紋ベタベタだったんだろうな」  テーブルの上に置き、紅茶を飲もうとペットボトルに手をやったときだった。  絆が俺のその手をキュッと持ちあげると自らにひきよせ、そのまま俺の手の平を自分の顔に張り付ける。 「ん?」  ぺたぺたと繰り返される行為に首をかしげる俺。 「んー?」  絆は小さくハニカミながらもペタペタペタペタ。 「なんだよ」  謎の行為にこっちまでちょっと笑ってしまった瞬間。 「山登の指紋でベタベタにしてんの」  ギュンッ!! 「絆あっっ!!!!!!」 「あ…っ」  結局。  エントリーシートが後回しになるのは、御愛嬌。   
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