第五章:人と妖と

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 「もう!どうしてそんな意地悪なこと言う んですかっ。どんなに別れが辛くても、自分 だけお婆ちゃんになっちゃっても、先生や皆 のことは絶対に絶対に忘れたくありません!」  キッ、と右京を睨め上げると右京は堪らな いといった顔で、ふっははは、と声を上げる。  その横顔は心底ほっとしたようにも見えて、 古都里は冗談を本気に捉えてしまったことが 恥ずかしくなってしまった。やがて目に滲ん だ涙を拭うと、右京は頬を緩めたままでポン、 と古都里の頭に手を載せる。  「ごめん、そう言ってくれるとわかってて 口にしたんだけど。やっぱり古都里さんは僕 が見込んだだけのことはあるね。そういう気 丈夫なところが魅力的で堪らない。でもね」  ポンポン、と、子どもにそうするように頭 に置かれていた手が離れて、すっ、と足元を 指差す。不思議に思ってその指先を辿った古 都里は、次の瞬間、ああっ、と声をひっくり 返した。  「どうやら僕たちは裸足でベランダに出て しまったようだ。足の裏が汚れてしまってい るだろうから、そろそろ靴下を脱いで部屋に 戻ろうか」  「は、はいぃ」  ベランダ口に置かれた一つしかないサンダ ルを振り返って古都里が肩を竦めると、二人 はどちらともなく笑みを零したのだった。
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