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『ごめんね』……。
トモヤの口からその言葉が出るたび胸が軋んだ。
それは俺のセリフ。
何度も何度も湧いて出てくるその言葉を、俺は何度も何度も呑み込んだ。
気持ちを分かってやれなくて、ごめんな。痛みを取ってやれなくて、ごめんな。
何もしてやれなくて、……ごめんな。
それを口にすれば、たぶん俺の心は楽になる。無力な自分を少しだけ楽にする、自己満足の言葉。
同時にそれは、トモヤを苦しませる言葉でもあった。だから、全て呑み込んだ。
どうにかしてやりたいのに、どうにもできなくて。どうにもできないのに、どうにかしてやりたくて。
何もできない自分に腹立って……。
ただ、腕の中で泣き続けるトモヤの心を楽にしてやりたいだけなのに。その涙を止めたいだけなのに……。
トモヤを笑顔にしたい。
ただ、それだけなのに……。
人を傷つけたり、泣かせたりすることは簡単なのに、トモヤの涙を止めることは、笑顔にすることは、どうしてこんなにも、難しいんだろう……。
トモヤの苦しみを、痛みを、哀しみを……、全部、奪ってしまえたらいいのに……。
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