127人が本棚に入れています
本棚に追加
膝がぶつかりそうな高さのテーブルに、酒が置かれた。
男の目がグラスに向けられ、プラスの意味で反応したことがはっきりと分かる。
細く背が高いコリンズグラスに入った、「チャイナブルー」。
南国の海を思わせる、ライチリキュールベースのカクテル。
その抜けるような青い色は、ブルーキュラソー(リキュール)によって作り出されている。
アルコール度数が低く、ライチの甘みとグレープフルーツジュースの酸味で、スッキリとした口当たりは、酒に強くない男にも飲みやすいだろうと思った。
男はその好奇心旺盛な目に青い色をしっかり映すと、視線をメニューに移し、そっと手を伸ばした。
「チャイナブルーな」
カクテルにはいろんな名前が付いている。
おそらく男は、名前を知りたいんだろうと思った。
「チャイナ……ブルー……」
「中国って意味じゃねぇよ」
「え……? あ……、陶磁器……?」
「なんだ。知ってんのかよ……。飲みやすいとは思うけど、合わなかったら、他の頼むよ」
男は「いただきます」と小さく言って、グラスに口を付けた。
男の好みに合ったんだろう。
口角が少し、上がったように見えた。
「おいしい、です……」
「そ……。よかった。こっちはジントニックな……」
男の視線を感じ、一応教えてやったが、ジンにトニックウォーターを加えた無色透明の液体は、中にくし形のライムが入ってはいるものの、そこまで男の興味を引かなかったらしい。
最初のコメントを投稿しよう!