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・スイーツ男子。
「なんでも好きなもん食って。……っつっても、何がうめぇのか知んねぇけど」
男に無理やり紹介させたカフェ。
ここら辺のことは、よく知らない。
昨日、警察に連れてかれて、たまたま来ただけだから。
「コーヒー」
ピンク色の長い爪を付けた店員の女に言った。
女はなぜか、自分の爪に色や柄、飾りを付けたがる。
ホストクラブに来る女も、みんなこれと同じような爪をしていた。
ピンクやベージュ、赤・青・白・黒……。
長い爪に、ラメやらストーンやらスタッズ、パールが付けられ、ドット・ゼブラ・レオパード……の柄や、なんかよく分からねぇキャラクターが描かれたものもあった。
そういう爪が好きなヤツも居るんだろうけど、俺は全く興味がなかった。それでも、嬉しそうに見せびらかす女の望み通りの言葉を吐いてやった。
繊細なものにでも触れるような、優しい手つきで女の手を取り、「綺麗だね」「可愛いね」「似合ってるよ」……と。
「あ……。じゃ、おれも……、コーヒー、を……」
「かしこまりました」
女がテーブルを離れようとしたとき、メニューを見ていた男の目が、一瞬だけ反応するのが見えた。
「何? なんか食いたいもんあった?」
「あっ……、え……。っ、いえ……」
「すいません……。追加、いいですか?」
女を呼び寄せ、焦って口をぱくぱくさせる男に視線を向ける。
「好きなもん頼みな」
「あ、あの……。じゃ……、わっ、ワッ……フルを、一つ……。っ、お願い、します……」
男は俯き、耳まで赤くしていた。
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