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せっかく好きなもん食ってても、相手が俺じゃ、美味くねぇんだろうな……。そう思いながら視線を向けると、案外そうでもなかったようで、男は結構、嬉しそうな顔をしてワッフルを食っていた。
「っ、あの……。何も、食べないん……ですか……?」
初めて男から話が振られた。
「あぁ……。腹減ってねぇ」
「っ、……そう、なん……です、か……」
じゃあ、なんで誘ったんだよ! という不服の表れだったんだろうか。男は俺の答えに、瞼を小さく反応させた。
「あんたさ、あの公園で、何やってたの?」
男と会った公園は、休日に親子連れやカップルが憩うような、きれいに整備された公園というわけでも、近所の人間や子供たちが集まる、地域に親しまれた公園という感じでもない。
どちらかというと、長いあいだ放置された寂れた公園。そんな感じだった。
「っ、本を……、読んで、ました……」
地味男らしい答えだな、と鼻で笑った俺の視線が、男の左頬に鋭く刺さる。
おいっ。
どんな食い方したらそうなるんだよ。
「クリーム、……付いてる」
男は口にフォークを突っ込んだまま驚いたように視線を上げ、治まりかけた顔をまた赤くした。
クリームを頬に付けて、可愛さアピール。
女だったらあざとすぎて反吐が出る。
でも、相手は男。
俺に対してアピールなどするはずがなかった。
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