・スイーツ男子。

3/6
前へ
/986ページ
次へ
 せっかく好きなもん食ってても、相手が(こんなん)じゃ、美味くねぇんだろうな……。そう思いながら視線を向けると、案外そうでもなかったようで、男は結構、嬉しそうな顔をしてワッフルを食っていた。 「っ、あの……。何も、食べないん……ですか……?」  初めて男から話が振られた。 「あぁ……。腹減ってねぇ」 「っ、……そう、なん……です、か……」  じゃあ、なんで誘ったんだよ! という不服の表れだったんだろうか。男は俺の答えに、(まぶた)を小さく反応させた。 「あんたさ、あの公園で、何やってたの?」  男と会った公園は、休日に親子連れやカップルが(いこ)うような、きれいに整備された公園というわけでも、近所の人間や子供たちが集まる、地域に親しまれた公園という感じでもない。  どちらかというと、長いあいだ放置された寂れた公園。そんな感じだった。 「っ、本を……、読んで、ました……」  地味男らしい答えだな、と鼻で笑った俺の視線が、男の左頬に(するど)く刺さる。  おいっ。  どんな食い方したらそうなるんだよ。 「クリーム、……付いてる」  男は口にフォークを突っ込んだまま驚いたように視線を上げ、治まりかけた顔をまた赤くした。  クリームを頬に付けて、可愛さアピール。    女だったらあざとすぎて反吐(へど)が出る。  でも、相手は男。  俺に対してアピールなどするはずがなかった。
/986ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加